直感
同じ敷地内のアパートの方が
引っ越しをしていきました。
ワタシの住んでいるアパートは
住人の交流はほとんどありません。
会ったら挨拶を交わす程度です。
それが
人付き合いの苦手なワタシにとっては居心地が良いのです。
それは
全ての行動がいつの間にか知られている田舎の生活とは違って
自由な気がするのです。
だからここの環境は気に入っています。
一応入居するときには
同じ棟の方には挨拶をして回りましたが
残っているところは少なくなって
新しく入った方は何もないので名前さえ知りません。
今回も引っ越しだと分かったのは
たくさんの人がやってきて
トラックに荷物が積まれるのが見えていたからで
引っ越して行った方の名前も知りません。
そこは空室になったと思っていました。
しかし すぐに
空室になった部屋の外に洗濯物が干してあるのに気づきました。
あら 誰か引っ越してきたのかな？
でもその部屋の駐車場には車はありません。
昼も夜もずっとありません。
だから前の住人がまだ残っていて
借りたまんまでいるのかな。
時々帰ってきているのかな。
と 思っていました。
それか
もしかしたら引っ越して行った人の知り合いが
そのまま入居したのかもしれない。
人の気配はあるけれど
部屋のクリーニングが入ったようでもなかったし
荷物が入った様子もなかったので。
ある日
母と出かけて帰ってきて車から降りたときに
知らない人に話しかけられました。
なんとその方は
その部屋に引っ越してきた方でした。
しばらく駐車場で立ち話。
その方は 親の介護のために
遠くからこちらに帰ってきたとのこと。
親は介護施設に入っていて
実家はちょっと不便なところにあるから
こちらに越してきたらしい。
でも車は持っていないそう。
それは こちらの生活は不便だろうなあ。
一応 歩いて行けるところに
お店やバス停はあることはあるけれど
便は少ないし。
ワタシは車のない生活は考えられません。
そのうち自転車とか購入するのかな。
その方はワタシのこともいろいろ聞いてきました。
あんまり詳しくは言いたくないのだけれど
母と二人で住んでいて勤め人ではないということは話しました。
ちょっと苦手だなあと思ったのは
同じ話が何回も出てくるところ。
起承転結で最初から順番に話をするタイプで
そして話が繰り返されるのです。
ワタシは結論を先に知りたいタイプ。
途中は良いです。
何を言いたいのか
結論が分かるまでが長いのが苦手。
結論にたどり着かない話のようにも感じる。
さっさと話を切り上げたいワタシは
部屋番号も教えてしまいました。
そして部屋に入りました。
しばらくすると
ピンポーン。
先ほどの方でした。
引越しの挨拶ですと言って
何か包んだものを持ってらっしゃいました。
一応受け取ったのですが
そこで終わりではなく
キッチンを見せてほしいと言ったのでした。
キッチンの家具の配置に悩んでいると。
確かにこのアパートのキッチンはちょっと形が歪なので
悩むのは分かります。
だから
つい部屋に入れてしまいました。
よくよく考えると
これは危険なことでした。
その日初めて会った人を部屋に入れてしまったのですから。
これは突然のことで不意打ちのようなもので
つい入れてしまいました。
だから
キッチンまでは良いとして
その先は進めないように
リビングに向かう通路の前に通せんぼの形で立って話をしました。
その方は
冷蔵庫の位置とかシンクの横の家具とかを見て
まさにそこをどうしたら良いか悩んでいると言いました。
確かにワタシもそうでした。
だからキッチンの配置について
工夫したことを話しました。
でもその方の話が長いのです。
話が終わらないのです。
そのうちに
ワタシにパソコンは使えるのか
ネットで買い物をするのかなどを聞いてきました。
使えますよ。
ネットで買い物もします。
その方は
スマホだけは使えるらしいです。
わああ
よかったわあ。
パソコンに詳しい方が近くにいらして。
？
どういう意味？
なんだか危険な香りがしたのです。
これまでの駐車場での会話からも
うすうす感じていたものでした。
車がないからワタシに買い物を頼もうとしている？
車に乗せてもらおうと思っている？
ネットの買い物もワタシに頼もうとしている？
何かそんな気配を感じたのです。
そんな気配がものすごくしたのです。
最初に感じた違和感というか直感がありました。
こういう方は一度 車に乗せてしまうと
それが当然だと思うタイプです。
親切にしたことが当たり前になり
どんどん要求が大きくなるだろうと思いました。
静かな生活が乱される予感。
だからワタシは決してその誘導に乗らないように
気をつけようと思いました。
ああ
そういえば
インターネットの室内工事の希望時間
記入しました？
ワタシは 話を変えました。
今度インターネットが無料になる工事があって
室内工事が必要らしいですよ。
○月○日らしいですよ。
その方は
室内工事の希望時間設定について
気づいていないようでした。
あら
それなら
希望時間を書いた方が良いですよ。
そこまで案内しましょう。
そう言って
二人で部屋を出ました。
やっと部屋から出ることができました。
ワタシは部屋に鍵をして出ました。
二人で掲示板のところに行って
無料インターネットの室内工事希望時間を記入する表を見ました。
ワタシはすでに記入しています。
他の部屋の方も何件かもう記入済みでした。
そこで ワタシは またまた あれ？と思いました。
空欄はいっぱいあるのに
ワタシと同じ時間帯に記入しようとしたのです。
ワタシは
別の時間帯の方がいいんじゃないですか？
と言いました。
すると
同じ時間の方がいいじゃないですか
と その方は答えました。
え〜 同じ時間じゃない方が良いです。
何か嫌だなあ。
わざわざ同じ時間を希望しなくてもいいんじゃない。
ワタシが先に記入していたけれど
これは時間がずれるのでは？
開始時刻が遅くなるのでは？
と心配しましたが
そんなことにはお構いなく
その方は ワタシと同じ時間帯のところに部屋番号を書きました。
用事は終わったので
それぞれ部屋に帰りました。
ちゃんとその方も部屋に入りました。
どっと疲れました。
なんだかなあ。
危険な香りがします。
ワタシは 自分の時間が突然 盗られることが嫌い。
自分のペースが乱されるのが嫌です。
相手の都合に関係なく入り込んでくる人は苦手です。
これは要注意人物だと感じました。
丁寧な言い方だけれど
自分の都合の良いように
操ろうとしているように感じます。
ただ距離が近いだけの人かもしれないけれど
それなら
距離を保って付き合っていけば良い。
でも用心するに越したことはない。
自分の生活が
かき乱されないように気をつけよう。
深く関わらないようにしよう。
嫌なことははっきり断ろう。
断れるかな。
とにかく自分のペースを守ろう。
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