暗いところにいたそうです。
母は黒い服を着ていて
ああこれから あの世に行くんだなあと
思ったそうです。
目の前に誰かの写真があって
それは知らない男の人の写真だった。
お葬式で見るような写真だった。
自分は息はしていなかったみたいだった。
そして気がついたら病室だった。
そんな話を
退院してうちに帰る車の中でしてくれました。
周りに人はいなかったの？
分からない。
おじいちゃんとかおばあちゃんとか
いなかった？
いや、いなかった。
暗かったの？
うん、暗かった。
どうやらお花畑でも三途の川でもなく
暗い中に黒い服を着た自分がいたのを覚えているそうです。
その時
ああ、のそらは一人になっちゃうなと
思ったって。
多分
その時が 母の一番危ない時だったのかもしれません。
その先に行かなくてよかった。
目が覚めてよかった。
ちなみに
母の記憶は
倒れた時のことは途切れ途切れで
手術後の２週間後ぐらいはあまり覚えていませんでした。
ワタシとのリモート面会も
退院前の２回分ぐらいは覚えていました。
血管造影検査の時のことも覚えていました。
一番苦しい時は
覚えていませんでした。
それはそれで よかったのかもしれません。
元気になって
帰ってきてくれてよかった。
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